Dr.Kです。
先日、休日を使って顎関節症の治療に関する専門セミナーに参加してきました。
「顎が痛い」「口を開けるとカクカク音がする」「口が開きにくい」
こういったお悩みを持つ患者さんは非常に多いのですが、実は多くの歯科医院でも「どう治療すればよいか」分からず、対応に困っているのが現状です。
今回私が学んできたのは、歯を一切削らず、しかも短期間(1〜3ヶ月)で症状を改善できる最新の治療アプローチです。
顎の不調でお悩みの方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
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【知っていましたか?】顎関節症は「歯の病気」ではない
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顎関節症と聞くと「噛み合わせが悪いから」「歯の形が問題だから」と思われがちです。
しかし、最新の考え方では、顎関節症は「運動障害(筋肉と関節の動きの問題)」と定義されています。
実際、見た目の噛み合わせが完璧に整っていても、顎関節症を発症する方はたくさんいます。逆に、噛み合わせが多少ずれていても、まったく症状が出ない方もいます。
大切なのは「歯の形(静的な状態)」ではなく、「顎がどう動いているか(機能・運動)」なのです。
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■ なぜ「片側だけ」痛むのか?
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顎関節症の症状が左右どちらか一方に出やすい理由、気になりませんか?
原因は「偏咀嚼(かたがわ噛み)」にあります。
私たちは本来、左右バランスよく噛むべきですが、無意識のうちにどちらか一方ばかりを使って噛む習慣がついてしまっていることが多いのです。
これは「癖」ではなく、脳にプログラムされた無意識の自動運動なので、意識して直そうとしても非常に難しい。
片側ばかりで噛み続けると:
- 使いすぎた側の筋肉が固く縮む
- 顎の関節の動きが悪くなる
- 口を開けるたびに顎が「くの字」にずれながら動くようになる
- その結果、痛み・クリック音・開口障害が生じる
これがメカニズムです。
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■ もう一つの大きな原因「TCH(上下歯列接触癖)」
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「TCH」という言葉をご存知でしょうか?
正常な状態では、食事中以外、上下の歯は接触していないのが正解です。安静にしているとき、歯と歯の間にはわずかな隙間(約1〜3mm)があるはずです。
しかし、スマホ操作中、パソコン作業中、運転中など、集中して下を向いているとき、知らず知らずのうちに歯を噛みしめてしまっている方がとても多いのです。
強く食いしばるブラキシズム(歯ぎしり)よりも、「軽い力で長時間接触させ続けること」のほうが、実は筋肉や関節へのダメージが大きいことが分かっています。
例えるなら「正座」と同じです。足への圧力はそれほど強くなくても、10〜20分続けると足が痺れてしまいますよね。顎も同じで、長時間の接触によって血流が悪くなり、だるさや痛みが生じます。
対策はシンプルです。
「歯を離そう」と意識するより、20分に1回、「ふっ」と息を吐くだけ。
息を吐く瞬間、人間は生理的に必ず歯が離れ、顎の力が抜けます。これを習慣にするだけで、多くの方が症状の改善を実感されています。
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■ 「歯を削らない」治療:CPCスプリントとは?
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従来の顎関節症治療といえば、上顎全体を覆うマウスピース(スタビライゼーションスプリント)が定番でした。
しかし最新の学会ガイドラインでは、このマウスピースの効果は「弱い推奨」にとどまり、長期使用でむしろ症状が悪化する可能性があるとされています。
そして「噛み合わせを調整するために歯を削る」という治療については、「行わないことを推奨」と明確に否定されています。
では当院では何をするのか?
それがCPC(コンダイル・ポジション・コレクター)スプリントという装置です。
特徴は:
- 前歯にだけ装着する小さなマウスピース
- 奥歯が「浮いた状態」になり、奥歯への咬合圧を完全に解放する
- 顎の関節を、圧迫のない正しい位置に誘導する
- 歯を削らず、可逆的(元に戻せる)
このスプリントを就寝時に装着しながら、日中は生活習慣の改善(片側噛みをやめる・TCHを直す)を並行して行うことで、早ければ2週間、多くの方は1〜3ヶ月で症状が改善します。
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■ こんな生活習慣、心当たりはありませんか?
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顎関節症を悪化させる生活習慣として、以下のものが挙げられます。
- 頬杖をつく(横から顎を押す力が顎関節を圧迫)
- うつぶせ寝・横向き寝(寝ている間に顎がずれる)
- 食事中にテレビを見ている(テレビがある方向に顔を向けると、無意識にその側で噛む)
- 吹奏楽器の演奏・スキューバダイビング(顎を固定・引く動作)
- 長時間のスマホ・パソコン作業(TCHの主な原因)
「同じ姿勢を持続させない」だけでも、大きく変わることがあります。
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■ 顎関節症は、治せます。
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「顎関節症は一度なると治らない」と思っている方も多いのですが、それは誤りです。
正しい診断と適切なアプローチで、多くの方が数ヶ月以内に症状の改善を実感できます。
以下のような症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
- 口を開けるとカクカク・ゴリゴリ音がする
- 顎が痛い、特に朝起きたときに顎がだるい
- 口が大きく開かない・開けにくい
- 片側だけ顎や歯がしみる・痛む
- 以前「顎関節症」と診断されたことがある
歯を削ることなく、可逆的な方法で、顎の「動き」から根本的にアプローチする。
これが、当院の顎関節症治療の基本的な考え方です。
皆様の大切な顎を守るため、今後も最新の知識と技術を学び続けてまいります。
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