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こんにちは。歯科医師のKです。
先日、根管治療(歯の神経の治療)における非常に専門的なテーマである「破折ファイル(はせつファイル)」についてのセミナーを受講しました。
「破折ファイル」と聞くと、少し怖い響きがするかもしれません。しかし、これは根管治療を行う世界中の歯科医師が直面する重要な課題であり、ここを深く理解しているかどうかが、「歯を抜かずに残せるか」に大きく関わってきます。
今回は、セミナーで学んだ最新の知見と、当院がどのように安全な治療に取り組んでいるかについてお話ししたいと思います。
根管治療の難しさと「ファイル」とは?
まず、根管治療とは、菌に汚染された歯の神経を取り除き、根の中(根管)を消毒する治療です。
この時、「ファイル」と呼ばれる、髪の毛ほどの細さのステンレスやニッケルチタン製の器具を使用します。
歯の根っこは、真っ直ぐなものばかりではありません。多くの歯は複雑に曲がりくねっています。
今回のセミナーでも改めてデータが示されましたが、どんなに優れた器具であっても、金属疲労や複雑な根管形態によって、治療中に器具の一部が折れて根の中に残ってしまうこと(これを「破折」と呼びます)が、一定の確率(約1〜3%程度)で起こり得ます。
器具が残ってしまったら、治療は失敗なのか?
もし器具が折れてしまった場合、患者様は「大変なことになった」と不安になられると思います。
しかし、最新の研究データ(エビデンス)によると、「器具が残っていること自体は、治療の成功率(歯の寿命)にほとんど影響しない」ということが分かっています。
なぜなら、根管治療の本当の目的は「器具を取り除くこと」ではなく、「細菌を減らして、再感染を防ぐこと」だからです。
- 器具を除去すべきケース: その器具が邪魔をして、奥の細菌が掃除できない場合
- 無理に取らなくて良いケース: 除去することで逆に歯を削りすぎて薄くなったり、穴が開いたりするリスクが高い場合
この判断を、CT画像やマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いて的確に行うことが、プロフェッショナルの仕事です。
歯科医師としての取り組み:安心安全な治療のために
セミナーでは、除去のテクニックだけでなく、「いかにトラブルを防ぐか」という基本の大切さを再確認しました。
私が日々の診療で徹底していることは以下の3点です。
1. 器具の徹底した管理(折れる前に捨てる)
金属疲労は目に見えにくいものですが、当院では器具の使用回数を厳格に管理し、少しでも変形が見られたら、まだ使えそうでも「捨てる勇気」を持って廃棄しています。常に新品に近い性能の器具を使うことが、最大の予防策です。
2. マイクロスコープとCTによる精密診断
肉眼では見えない根管の奥底も、マイクロスコープなら明るく拡大して見ることができます。
「見えないから手探りでやる」のではなく、「見て確実に処置する」ことで、リスクを最小限に抑えています。
3. 正直で誠実な説明
万が一、偶発的に器具が残ってしまった場合でも、隠すことは絶対にありません。
「なぜそうなったのか」「今の状況はどうなのか」「今後どうするのがベストか」を、レントゲンなどをお見せしながら正直にご説明します。信頼関係こそが医療の土台だと考えているからです。
常に最新の知識をアップデートし続けます
歯科医療の技術は日進月歩です。
「昔はこうだった」という知識で止まってしまえば、患者様に最良の治療を提供することはできません。
今回のように休日にセミナーを受講し、世界の最新論文や、著名な先生方の難症例へのアプローチを学ぶことは、私にとって非常に刺激的な時間です。
学んだ知識をただの知識で終わらせず、「明日の患者様の歯を一本でも多く救う」ために還元していきます。
「他院で抜歯と言われた」「根の治療がなかなか終わらない」といったお悩みをお持ちの方も、ぜひ一度ご相談ください。

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